練習問題-15





『頼山陽書翰集』徳富猪一郎.木崎愛吉.光吉元次郎編

前回の母上様・南大人宛に同じく、読みやすい筆跡です。


文面についても把握しやすく、やはり小竹・檉園宛より格段に親切な書き様です。
たゞし、私は未見の三字に躓きました。


結果、933字中、誤読15字(1.6%)、保留4字。
今回の刻者は何か切れ味をさほど感じず、腑に落ちないところが残りました。
保留字を数えたのは、これがはじめてゞす。

   
本文
「金子受取□已達可申候」画像、と翻刻されています。たしかに「已」字は読み筋ですが、そうすると「に已」と読むほかなく意味が通じません。これは保留にするほかないでしょう。
「へ向返書」画像、「向」字はなにか書き損じた上から書かれています。「問」と同形をとるも、こゝは「向」とすべきところ。
「緊要用」画像、「緊」の字上の書き方は癖字でしょう。通常このような書き方はしないと思います。
「只今に」画像、「見合」と読み、もう迂闊としか言えない誤読です。

    
「楠公長律仝便ゝゝと存候ては」画像、この「仝便ゝゝと」の部分は翻刻ミスでしょう。「楠公長律今便へと存候ては」とすべきか。
「此義出来不申ば諸方大迷惑」「仕立可申と昼夜板刻」画像、こゝは「不申候は」「可申候と」と、どちらも「申」に「候」を附すべきところです。どうも刻者は敢えて省いたようですが、これを省いてしまうと、ほかの判定も覆ってしまいます。
「出来候て其後」画像、私はこの「候て」を文脈に沿わせるため「候はゝ」に替えました。通常は「て」と読んで差し閊えないのです。されども、「はゝ」例は過去の問題に「被仰下候はゝ」画像と読ませる同形もあり、判別は文脈に委ねられます。

   
「鬪詩」画像、はじめて草体を見ました。
「寡陋」画像、「寡」字に補筆あるとは不知。
「不可供玩」画像、書き損じのため読めず、仕方ありませんね。
「去年か及御相談置候故」画像、「か」字は「可」の方と見ましたが、「か」の可能性も慥かにあり、さてどちらでしょう。

  
「うめ木にても仕候間」、私は「仕候て」にすべきかと思いました。いずれ比較します。
「馬鹿」画像、機転「鹿」字に廻らず、みたまゝ「荒」にして誤り。
猶々
「書肆」画像、草体に過ぎ、難読です。

  
「受取□已達」画像、「被」字画像の「受取に被達」の線もありました。しかし「已」字画像の線もあり。