練習問題-1


『茶人の消息』千宗室監修 永島福太郎著

はじめはこの書状です。
文字がわりと鮮明に写っているので、これを選びました。

名の所に「瀧」字がはっきりと見えます。
その下ははっきりと見えませんが、おそらく瀧本坊かなと思います。
瀧本坊という名乗りは一人に限ったものではありません。そこで花押を資料と比べると、松花堂と分りました。
そうすると、その左端に書かれた字は、なんとなく「乗」に見えます。とすれば、全容は見えずともこれは「昭乗」と有るのでしょう、たぶん。

さて、なんと書かれているのか読んでみます。

(貴方)京都より御到来の由にて、不時に御意下され候。誠に以て切々御懇意忝く存じ候。
時分柄(年末の厳寒と、病氣とのためか)、御取籠り察し奉り候。年内餘日無く候の間、明春御礼申入るべく候。
御咳氣如何、御心元無く存じ候。恐惶謹言。十二廿七日。

尚々、御懇意忝く存じ候ゝゝ。
時分、ならの山みやり、御はやり申上げ候ゝゝ。
手前○事に付き、専らたんざくいたし申し候。

読み下すと、どこが不自然か分ります。
年代等の考証を省き、答を見ます。



『茶人の消息』千宗室監修 永島福太郎著

「時分、たからの山存やり、御うらやましく候ゝゝ、手前災事に付、方々のタンサクいたミ申候」、こゝは随分と間違えました。

   
「たからの」画像は候補の一つでしたが、私は「ならの」と読み、「存やり」は前部の勘違いから無理して「みやり」と読み誤りました。
「御うらやましく候」画像、候補に上るも字形が合わないと思い捨てました。
「災事」画像、上部を欠くため読めず。
「タンサクいたミ」画像、「短冊致し」のことかと読み違い、ひらがなは苦手です。


解説によれば、「タンサク」は「短冊」、貴方(光徳)は宝の山を持っていて羨ましい、自分は災事によって短冊を傷めてしまったと伝えているそうです。
本文の「ふ卅」画像は「麩三十」のことにて納得。
あと読み方、「御取籠り」ではなく「御取籠め」でした。

なお、解説に従って書面の要点は、麩の御礼+病状の見舞+尚々(蒐集物について)です。
蒐集物(たからの山)の話題は、宛所の人物が関係しており、「光徳(本阿弥光悦の義兄)」ではないかと推測されています。