古文書探訪-1


『こと消息』筆者蔵

いつから筺底にあったのか、ある日取り出し見ると、どうも恋文らしいと分り(但、一見したところ恋文でも、商売のためという消息もあるようです)、蠧魚の餌食になどならぬようにと思いて除け置きました。

大切の御用向、旅立つよしとも君、打ち続く雨、今一度立ちかえり給へ、馬を駆ってまた帰り来たる。

惜しむらくは、いつのどこのたれとも知れず、たゞ「こと」「よしとも君」とあるのみ。