今回の書簡もまた長らく深く考えず、延太郎とは誰だろうかと思っておりました。
実践問題に取りかゝり、小野崎通亮・井口糺・平田銕胤等の関係が分るにつれ、この書簡は延胤翁の筆だと氣付きました。
おそらく舊幕時代に認められたものでしょう。
資料無く、御供人の文言、出府・上京・帰国、いずれの話か決し難いです。
毎に労を惜しみ略していますが、たまには読み下してみます。
過刻参上仕り候処御留守中に付、只今参上仕るべしと存じ居り候処へ多人数客来に付、一應書中を以て申上げ置き候。
昨日の一条、今朝大夫へ申上げ候処御承知にて、相成るべくは其筋へ御願書差出され候はゞ、早速御取扱ひ成さるべき由に御座候。
此段然るべく御取斗ひ遊ばされ候様存じ奉り候。
一、御供人の事、心當りの方へ申談じ候処、明後十日に相違無く差上せ、御目見致させ申すべき由に御座候。御給金其外御手宛の処は伺ひ奉らず候得共、私方にて此度召連れ候者は月々壱歩宛遣し、其外に上りに壱両、下りに壱両、昼食料一日に銭弐百文宛遣し候積り、是は随分手輕の方に御座候間其通り下され候趣に申遣はし置き候。此節は迚も人無足にて容易に御受合ひ仕り兼ね候由、取扱人申聞け候。委細は参上の上萬々申上げ奉るべく候。拜
延胤は、銕胤の長男です。
井口糺は銕胤に師事しており、また(糺の)実の父親小野崎通孝は篤胤と親交がありました。